アメリカ政府閉鎖の歴史とドル円・金利への影響
公開日: 2025年9月30日
アメリカ政府閉鎖とは
アメリカでは、議会が連邦予算を承認できない場合、資金供給が途切れ「政府閉鎖(Government Shutdown)」が発生します。1976年の予算プロセス導入以降、23回の資金ギャップがあり、10回が本格的な閉鎖に至りました。主な原因は政治的対立(例: 移民政策、医療改革、支出削減)で、連邦職員の給与停止や非必須サービスの停止を招きます。この記事では、過去の主要事例と、ドル円(USD/JPY)や米国債利回りの市場動向を解説します。
過去の主要な政府閉鎖
以下は、1980年以降の主な政府閉鎖の事例です。期間が長いものから順にまとめました。
年月 | 期間(日数) | 原因 | 影響 |
---|---|---|---|
2018年12月 – 2019年1月 | 35日(史上最長) | トランプ政権下でのメキシコ国境壁資金を巡る対立 | 約80万人の連邦職員休職、経済損失約30億ドル(GDPの0.02%) |
1995年11月 – 1996年1月 | 21日 | クリントン政権下での支出削減案への対立 | 約27万人の職員休職、国家公園閉鎖、経済損失約18億ドル |
2013年10月 | 16日 | オバマケア(ACA)実施を巡る対立 | 約80万人の職員休職、経済損失約240億ドル |
1995年12月 | 5日 | 同上(2回目の閉鎖) | クリスマスシーズンのサービス停止 |
2018年1月 – 2月 | 3日 | 移民保護政策(DACA)と予算の対立 | 軽微な影響、短期解決 |
注: レーガン政権(1980年代)で8回、トランプ政権(2017-2021)で3回など、過去50年で21回の閉鎖が発生。平均5-10日で解決(2025年9月時点)。
ドル円(USD/JPY)の市場動向
政府閉鎖は不確実性を高め、米ドル(USD)に短期的な下落圧力を与えます。ドル円(USD/JPY)は以下のような動きを見せます。
- 傾向: 閉鎖中、米経済への信頼低下でドル売り。平均-0.3%の下落(1977年以降)。円は安全資産として買われやすい。
- 例: 2018-19年閉鎖では、USD/JPYが110円台から108円台へ1%下落。2013年も同様に下落後、解決で反発。
- 2025年9月: 閉鎖懸念でUSD/JPYが148.50円台へ下落(-0.4%)。米連邦準備制度(Fed)の利下げ期待と日本銀行(BoJ)の利上げ観測が円を支援。
- 長期影響: 解決後、数日で回復。トレンド転換は稀。
米国債利回りの動き
閉鎖中、安全資産である米国債が買われ、利回りは低下します。以下は主な傾向です。
- 傾向: 10年物米国債利回りは平均-0.59%低下(1976年以降)。利払い継続のため信用リスクは低い。
- 例: 2013年閉鎖では、10年物利回りが2.1%から1.7%へ低下。2018-19年も同様の動き。
- 2025年9月: 10年物利回りは4.141%で横ばい、2年物は3.619%へ微減。Fedの利下げ期待と連動。
- 長期影響: ボラティリティ(MOVE指数)上昇後、解決で正常化。株式市場への影響も軽微(S&P500変動0%程度)。
投資家への示唆
政府閉鎖は一時的なイベントと見なされ、市場への長期影響は限定的です。ただし、2025年のように債務上限問題と重なると(例: 2011年の格下げ)、影響が拡大するリスクがあります。投資家は以下の点に留意してください。
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